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ここでの“ボンサイ”とは「盆栽」と「凡才」との二つの意味を含みます。盆栽のように、マシンをカスタマイズすること自体を楽しんでいる凡才人のブログです。

ヘリコプターに乗ってみた [旅日記]

久方ぶりの泊まりがけの旅。
ヘリコプターに乗るために、三宅島まで行ってみた。
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トップの映像は昭和53年の噴火で溶岩に吞まれた小学校の校舎を背景に、その溶岩に根を下ろして花を咲かせるハチジョウイタドリ。出発は東京都の調布飛行場から。
朝、5時に起きて電車とバスを乗り継いで調布飛行場に到着。
8:40発する三宅島空港行き401便にチェックイン。
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新中央航空が運行する乗客定員19人のプロペラ機、ドルニエ228型。
こんな小さな飛行機に乗るのも初めてで、今回の旅の楽しみの1つである。

空港も小さくて、どこか、小さなフェリーターミナルのようでもある。
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当然のごとく、ターミナルビルから搭乗機への移動も徒歩である。
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この日は朝からしとしとと雨がふり、黄色い傘は空港から貸し出されたものだ。

チェックイン時にもらう搭乗券には座席番号が書かれておらず、タラップの脇で空港職員が乗客の名前を呼び出し、このときに座席番号が指示される。
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前の席から順番に座っていかないと狭い機内で身動きが取れなくなってしまうからなのだろう。
ちなみに乗客名簿を持っている職員の右側に見えるハッチは貨物室である。
高速バスの床下トランクのように、職員によって旅行カバンが整然と積み込まれていた。

機内の様子はご覧の通り。
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バスより狭く、身長175cmのわたしが立ち上がるとまっすぐ立てない天井の低さ。
とはいえ、機体断面が円形ではなく四角いので、座席に座ってしまえば充分快適である。

わたしの座席は後ろから2列目の、ちょうど乗降口から入ってすぐの席だった。
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客室ドアはタラップを兼ねており、客室乗務員がいないので空港職員が外から閉めてロックする。

フラップやエルロンの動きが見られる特等席から、東京の住宅街上空へ飛び上がると、町はあっという間に雲の中に消えていく。
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雨雲よりも高い高度を巡航して10分もすると、早朝から1時間以上も電車に揺られたせいか眠気に襲われ、まもなく着陸態勢に入るという録音アナウンスで目が覚めた。
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眼下を見下ろせば、雲に円形の虹が映し出されている。
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三宅島の天気予報は曇りとのことだったが、はたしてどうだろうか。
島の中央にそびえる、というより島そのものを形成している活火山の雄山。
その噴火口が上空から見られるんじゃないだろうかと期待して今回は空の旅を選んだのだけれど…

残念ながら山頂は低い雲に覆われて、姿も見えないほどだった。
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ちょうど左舷の窓の正面に空港の滑走路が見える。
空港沖の海上で旋回し、南北に延びる滑走路に南からアプローチするらしい。

ちょっぴりわくわくなフライトを終えたら、空港の建物を出てレンタカー屋の人を探す。
今回、島の移動には軽自動車をレンタルしてみた。
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すぐにタクシーに乗ってヘリポートへ向かえば、その日のうちにヘリに乗って大島に渡り、横浜まで帰ってこれるのだが、せっかく三宅島まで来たのだから島を一周見てまわることにした。
島の北部にあるレンタカー屋はガソリンスタンドも兼ねていて、同時に店舗には日用品や衣料品まで販売している、島の何でも屋になっていた。
通常の大手レンタカー店よりはるかに簡素な手続きを済ませて、いざ出発。
車種は10年ぐらい前の初代スバル・ステラ。
カーナビも付いているけど、スマホの地図アプリを見た方がよっぽど頼りになるぐらい、地図の精度が粗い。

海岸線を反時計回りにドライブして、南西部の阿古地区から南戸林道で島の中心部、つまり雄山の山腹へ上る。
上った先には七島展望台という、スコリア丘陵のてっぺんまで上る道が整備されている。
やはり雄山は雲に覆われ山容がまったく見えない。
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七島展望台のふもとには、かつての牧場跡があり、青いサイロだけがその面影を残している。
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サイロのすぐ脇には白い構造物が設置され、ピッ…ピッ…と定期的な電子音を発していた。
火山性地震の観測でもしているのだろうか。

また、サイロの近くの道路脇には「牧場公園案内図」が遺されていて、かつてはここが島の一大観光エリア立ったことを忍ばせる。
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頂上付近には八丁平というカルデラに自然散策路や展望台などが敷設されたエリアがあったそうだが、2000年(平成12年)の噴火で陥没、消滅してしまったそうだ。
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案内図の左下には「ふれあい広場」なる子供向けの施設もあったようなので、立ち入り禁止でなければその廃墟も見てみたい。
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というわけで、雄山周遊林道を時計回りにクルマを走らせてみるが、それらしき痕跡は見当たらない。
通行止めの場所まで行き当たったところで、廃墟は立ち入り禁止区域にあるのだろうと思って引き返した。
あとでGoogleマップの航空写真を見てみると、どうやら溶岩流に完全に飲み込まれてしまったようで、わたしはその場所を通り過ぎいたようである。

案内図にかすれた文字で「??ダム」と書かれた四角いダムも描かれていたが、航空写真ではそのダムも半分ぐらいが埋没している様子だ。

周遊林道を走っていると、青々とした森の中に、立ち枯れた木々も散在している。
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表面が黒っぽく見えるのは焼けた跡なのか、それとも単に年月が経過して腐りつつあるからなのか…

再び阿古地区の海岸線にもどり、旧阿古小中学校跡にやってきた。
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トップの写真にも紹介したこの学校は、小学校と中学校が並んで建てられていたもので、1978年(昭和53年)の噴火の際に溶岩流が校庭に押し寄せ、校舎が溶岩を堰き止めるようなカタチで2階部分までの高さが飲み込まれた。
こうして写真を撮っている足の下、数メートルには当時の校庭が埋まっているのである。
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現在は木道が敷かれ、阿古地区の集落全体を飲み込んだ溶岩の上を見学できるようになっている。

そんな溶岩の中に奇妙なカタチの岩を見つけた。
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コンクリート製の電柱のような人工物が溶岩の熱で焼けただれたのかと思っていたが、案内看板によると立木が溶岩に飲まれた際に形成されるものなのだそうだ。
立木の水分が蒸発して燃え上がるまでの時間に、周囲の溶岩が固まり、このようなちくわ型の岩が形成されるのだそうだ。

時間はたっぷりあったので、三宅島の絶景、名所も一通り巡ってみたが、紹介しきれないので今回は割愛する。
15:30にはレンタカーを返却し、レンタカー屋から徒歩数分の民宿に泊まった。
だがこの民宿、宿泊料の割に質が低くて残念な宿だった。
夕食にはモンガラカワハギの一種とみられる、わたしは食べたことがないような魚が丸焼きにされて出たのだけど、冷めてしまってておいしくなかった。
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翌朝は9時過ぎにチェックアウトして、徒歩でヘリポートへ向かった。
宿から歩いて30分はかかるが途中の大久保浜を見ながら歩こうというスンポウである。
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浜は砂ではなく、真っ黒なビー玉ぐらいの軽石で、波が引くときにジャララララーと騒々しい音を立てているのが印象的だった。

さて、満を持してのヘリ搭乗。
ヘリポートのそばには少し大きな派出所ぐらいの大きさの建物があり、そこで搭乗手続きやら保安検査などを受ける。
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トイレはなくて、行きたくなったら100メートルぐらい坂道を下ったところの避難施設にあるトイレに駆け込まなければならないそうだ。
余裕を持って早く来すぎてしまったため、小一時間ほど待った。
そのうち観光客風の女性と地元の方と思われる男性がやってきて、このヘリポートからは3名が搭乗した。
地元の男性とヘリポート職員の会話を聞くところ、男性は運転免許更新のために大島まで行くのだそうだ。
ヘリコプターは島民の生活に根付いた移動手段として活用されているようである。

わたしはこれまでの生涯でヘリコプターには一度も乗ったことがない。
おそらくこの先も、必要に迫られて乗ることはないだろう。
一般人でも料金さえ払えばヘリコプターに乗れると知ったのは、高校生のころだったか。
JTBの時刻表の、後ろの方のページに成田空港と羽田空港を結ぶ連絡ヘリが定期運行されていたように覚えている。
そんなヘリにいつかは乗ってみたいと考えていたが、バブリーな時代の需要がなくなったせいか、いつの間にかその路線は廃止されていた。
現在でも東京や阿蘇には周遊ヘリが飛んでいるらしいのだけど、移動手段としてのヘリがあると知ったのは昨年、大島に渡ったときのことだった。
旅のプランを立てている中で存在を知ったものの、そのときは大島だけに訪れるプランだったので乗れなかったのである。
「愛らんどシャトル」と名付けられたこの路線は東邦航空が運行しており、利島、大島、三宅島、御蔵島、八丈島、青ヶ島を巡回して往復する定期路線で、毎日一往復ずつ運行されている。
本州と各島を結ぶ路線はないので、観光客なら島巡りをする旅でもない限り、乗ることがないだろう。
一方で、大きな病院に行かなければならない場合など、島民にとっては貴重な交通手段なのかもしれない。
そういえば、わたしの父はかつて、離島の病院から本州まで救急搬送されたことがある。
なにやら背中のほうが痛いので、自分で運転して勤め先の病院に駆け込んだところ、心臓疾患の兆候が認められ、緊急手術のためにヘリで運ばれたのだそうだ。
通常は消防のヘリで運ばれるところ、当日は天候が悪くて消防のヘリは出せず、自衛隊のヘリがやってきたのだとか。

それはともかく、出発時間の11:00が近づくころ、窓の外にヘリの音が近づいてきた。
お、来たな?
指示があるまで建物から出られないので、窓にかぶりついてカメラを構えると、着陸する直前に窓が風圧でバタバタと揺らされる。
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機種はシコルスキーS76C。
ロシアの枡書き職人みたいな名前だがアメリカ製。

ローターの回転速度が落ちて、降りる客が建物に入ったのち、出発ロビー(というか待合所)の扉が開かれてヘリへ向かう。
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映画などでみるような、衣服がバサバサなびくほどの風は感じないが、回転するローターの圧迫感がこわくてつい首をすくめてしまう。
急いで乗り込むと機内にはすでに2名の乗客がいた。
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御蔵島や八丈島の方から乗ってきて、三宅島では降りずにそのまま大島まで連続して乗る客だ。
ワンボックスカーを一回り大きくしたぐらいの室内に乗客定員は9名で、座席は変則的な3列。
その一番後ろの窓側に陣取った。
操縦士席との壁はなく、計器や何が何だかわからないぐらいにたくさん並んだ操作系がよく見える。

今日は雄山の噴火口が見られるだろうか…
あんまり期待はしていなかったけれど、離陸してすぐに島に背を向け、徐々に高度を上げるようにして飛び立ってしまった。
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どんなに天気がよくてもこの飛び方では雄山は見えないなあ。
なんとか窓に貼り付いて後方の景色を見てみたけれど、そもそも飛行高度が山より低い。
この路線のヘリで絶景は見られないのか。
巡行中の高度は数百メートルといったところで、運がよければ海上を泳ぐクジラやイルカが見られるかもしれない。
キーンというエンジンの騒音だけでなく、ドアがバタバタと振動する音が激しい。
なんせ、振幅30mmぐらいは振動して、そのうち疲労破壊でドアがぶっ飛ぶんじゃないかと思うぐらいである。
風は弱い日だったのであまり揺れなかったが、ときどき、ぐらぐらっと左右への揺れ(ロール)が発生し、その感触はロール軸が頭上にある懸垂式モノレールに近いものを感じた。

ほんの15分ほどのフライトで、大島が見え始めてきた。
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やはり飛行高度は山の中腹程度で、三原山を見下ろせる機会はなかった。
その上、大島は天候が悪い。
三宅島は天気がよかったけれど、ヘタすると途中で引き返す「条件付き運行」なのであった。

昨年、帰りの船が出帆した元町港を眼下に見つつ、ヘリは徐々に高度を下げて大島空港へとアプローチする。
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大島空港では滑走路上に着陸し、ターミナルビルまでタキシング(地上走行)する流れだった。
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ヘリコプターが地上を走る姿は見たことがなかったけれど、けっこうな速度で走ることができるようだ。
通常はこのあと、利島に向けて出発するのだが、この日は決行となりエンジンを止める作業に入っていた。

ローターを止めるとき、油圧ジャッキを操作するかのように天井から伸びるレバーを動かしていたけど、アレはなんだったんだろう。
ローターを固定するパーキングブレーキみたいなものかな。


おまけ
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空港ビルの一角には大島の特産が並べられたコーナーがあり、木製品やら椿油の製品やらが並べられている。

そこに混じっておわせられますは…
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ら…ランバ・ラル大尉!?
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コメント 5

よっすぃ〜と

僕は旅客機ってヤツには乗りたいと思わないのですが、ヘリコプターには乗ってみたいな~
by よっすぃ〜と (2018-09-25 21:52) 

nozzy

もっとスリリングな乗り物かと思ってましたが、思いのほか安定していてちょっと肩すかしを食らうぐらいでしたよ。
by nozzy (2018-09-25 22:05) 

FD

貴重な体験をされましたね。
しかし「東邦航空」でしたか。飛行計画書は正しく提出したかな?
ところで私はヘリコプターに乗ったことがありません。

by FD (2018-09-26 14:31) 

わたべ

天気がイマイチで残念でしたね。
どうも私は、一生ヘリコプターには乗れそうもありませんが。
by わたべ (2018-09-26 18:06) 

nozzy

>FDさん
そういえば、同乗した地元の男性は職員に向かって「このヘリときどき落ちるんだろ?まあワシは死んでも息子が喜ぶだけだがなー」なんて毒舌はいてましたよ。

>わたべさん
そうなんですよねー。あとは天気さえよければ完璧でした。
by nozzy (2018-09-27 22:00) 

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